Fountainpen, 日興エボナイト 笑暮屋さん

日本橋三越“万年筆祭り”へ行ってきた

 3月14日(水)~20日(火)、日本橋三越本店新館7階で行われた「世界の万年筆祭り」に行ってきた。
 パイロット、プラチナ、セーラー、仙台大橋堂、日興エボナイト、呉竹、ペリカン、カランダッシュ、パーカー、アウロラ、シェーファー、クロス、ウォーターマン、デルタ、コンウェイ・スチュワート、……と多くの筆記具メーカーが集まる祭典。広々としたフロアに、それぞれのメーカーがライトアップしたガラスケースに商品を展示し、通路も広くて見やすさに工夫を凝らしている。
 ショーケースに足を止めれば気軽に店員が「どうぞ、お手にとって見て下さい」と高価な万年筆を惜しげもなく出して見せてくれる。 普段、高級筆記具のコーナーでケースを覗きこむのは少々緊張するが、この「祭り」では気兼ねなく、より気楽な心持で臨むことができる。試し書きも随分と勧めてもらった。
<中屋万年筆>
 中屋万年筆では漆の作品が素晴らしく目を引いた。日本らしく縁起の良い古典柄のものも、仕上げが高蒔絵と豪華で存在感が強い。
 取り出して見せてもらったのは、蔓(白金錫布目)という万年筆。〔リンク先→http://www.nakaya.org/review.aspx?id=11048&type=body
 蔦は縁起の良いことが続くように、という願いをこめたラッキーなモチーフとのこと。
 下地に麻布を着せて漆で固定した後に下地漆を布目に塗込み、黒漆を塗る。それが固まった後、錫粉を蒔き、固定するため漆を塗る。布の質感が軸に出る様に研ぎ出してつやをあげる。その上に、蔦と蔓を高蒔絵で描く……という工程。蔦は若葉から紅葉する様が上から下に向かって流れるように描かれ、形といい色艶といい美しい。万年筆は実用してこそだと思っていたが、こうも美しく見るだけで心が和み、手に取れる小さな芸術品だと思えば、ありだな、と思う。325,000円。
〈シェーファー〉
 今のラインアップを見たくて足を止めたシェーファーの店舗。ケースの前に佇んだだけだがすぐに試し書きを勧められた。差し出されたのは、レガシーへリテージのスターリングシルバー パラディウムトリム。適度な太さのボディにインレイニブ、シェーファーの定番の形だ。書いてみてペン先のしなりに驚いた。柔らかくしなり、紙へのあたりもよく素晴しく書きやすい。このシリーズはペン先は18金を使用しているとのこと。50,400円。同じスターリングシルバーのゴールドトリムは52,500円。
 もう一種勧められたのはVLR、色はマーブルのディープブルー。V字のクリップが特徴で近代的なデザイン。ニブは同じくインレイニブで素材は14金。色は他にブラック、グロッシーブラウ、バーガンディなどがある。レガシーよりもカジュアルに見えるがさほど値段は変わらず、47,250円。
 胸がときめくような新商品は出てこないが堅実に良いものを作り続けている。レガシーへリテージ、いつか買ってみたいと思う。
<日興エボナイト製造所>
d90_20120319_0012_20120326132135.jpg  日興エボナイト製造所は今年、2回目の出店。「絆」「出会い」「空」とメッセージ性のあるポスターが掛かっている。
「絆 人と人を結び付ける絆の赤 やさしさ伝わる“まごころ”」
「出会い 一期一会の“縁”を大切に」
「空 希望の青 心を落ち着かせる大空の静寂」


d90_20120319_0008.jpg 万年筆の種類も随分充実してきた。
 クラシカルなキャップと軸に段差のない「萌芽」、竹を模した「立竹」、クリップの合う天地が平らな「棗」、丸みを帯びた「宝珠」、そのほか、オノト型、樽型もある。
 軸のサイズもそれぞれSMLと軸の径で3サイズ。
 インクの充填方式も、カートリッジ式、インク止め式、ボタンフィラー式と3タイプ。
 形 × サイズ × 充填方式 × 素材 で組み合わせが無数なので、じっくりとウェブでカスタム注文するのもおすすめだ。

d90_20120319_0006.jpg 新製品のボールペンの売れ行きも好調のようだ。
 ツイストしてペン先を繰り出すボールペン、リフィルはクロスタイプ。
 黒エボナイト製は6,090円。マーブルエボナイト製は9,870円。
 やや高価だが全てエボナイトの棒から轆轤を使って1本1本削り出し、表面の磨きにもかなり手間がかかることを考えれば納得の価格。1本注文してみた。完成が楽しみだ。

d90_20120319_0010.jpg このようなイベントではお手頃価格の新製品が並ぶ。セーラーのインク瓶用スタンド(グラファイト製)、2,100円。ペンスタンド(エボナイト製)、3,150円。エボナイト製しおり、315円。他、ペンレストや印鑑スタンド、など、実用重視でエボナイトの素材感が楽しめる製品がたくさんある。
 今月末には「『良いモノ 一生モノ 出会い展3』谷中、文房具の散歩道」という展示会を予定しているので、足を運んで頂ければと思う。


展示会散策後、


おまけ……
<三越レトロカフェ by 洋菓子舗ウェスト>
d90_20120319_0014.jpg1年半ぶりに会った万年筆仲間とティータイム。日本橋三越新館3Fにある三越レトロカフェ。
珈琲は840円。ケーキセットで1,155円と百貨店価格だが、珈琲や紅茶はおかわり自由。ゆっくりくつろぐおじさま、おばさまが多く常に混雑している。
ミルフィーユは、注文してからカスタードクリームを入れてくれるのでサクサクの触感が楽しめる。
万年筆話は尽きず、あっという間に時間が過ぎていった……オフ会に参加しなくなって1,2年経ってしまったが、仲間との会話は隔たりを感じず楽しいものだった!

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